― 年会費は“額面”で見るな。純投資元本を見よ ―
前回の記事では、高級クレジットカードの年会費を
「消費」ではなく、投資回収を前提とした投下資本(初期投資)として捉える
評価フレームを整理しました。
では次に問うべきは、
その投下資本が、実際にどこまで圧縮できるのかという点です。
これは、高級クレジットカードには、
各種保険が付帯していることが一般的であり、
それらの保険が、あなたが既に入っている保険と重複している可能性
があるために検討する論点です。
それは、
既に支払っている支出との重複を整理すること、
すなわち「保険料の二重払い」を見直すことです。
本記事では、高級クレジットカードに付帯する各種保険を例に、
既存支出とどこまで重複しているのか、
そして年会費という投下資本をどの程度圧縮しうるのかを
具体的な数値前提で検証します。
なぜ「保険」から検証するのか
年会費という投下資本を圧縮できるかを検証するうえで、
最初に見るべきなのが「保険」です。
保険は、高級クレジットカードの付帯特典の中でも、
すでに支払っている支出と重なりやすく、
かつ、その価値を数値として捉えやすいという特徴があります。
そのため、年会費を「投資」として評価する際の
出発点として最も適した領域だと言えます。
ただし、クレジットカードに付帯する保険は多岐にわたるため、
本記事ではすべてを対象とするわけではありません。
本記事では、年会費圧縮の観点から、
以下の条件を満たす保険に検証対象を限定します。
① 市場価格が比較的明確で
② 既存支出との重複が発生しやすく
③ 金額換算が可能
上記の条件が満たされるものは、具体的には、以下の3つの保険です。
① 海外・国内旅行保険
② 個人賠償責任保険
③ ガジェットの延長保証
※以下の表では、実際の利用状況を単純化し、
「どの保険支出が、どのような条件で重複しやすいか」
を整理するための想定ケースです。
| ケース | 海外渡航 | 既存保険加入 | 検証対象 |
|---|---|---|---|
| ケースA | 年1回以上 | 都度加入 | 旅行保険の重複 |
| ケースB | 年2回以上 | 年間保険加入 | 補償上限・内容 |
| ケースC | なし | 個人賠償責任保険加入 | 日常補償の重複 |
| ケースD | 家電購入多 | 延長保証加入 | 家電・ガジェット補償 |
これらの想定ケースを前提に、
保険の種類ごとに「どの支出が、どの程度代替・圧縮され得るか」を
順に検証していきます。
検証① 海外・国内旅行保険
想定ケース:ケースA・ケースB
本検証は、
- 年1回以上の海外渡航があるケースA
- 年2回以上の海外渡航があるケースB
を主な前提としています。
これらのケースでは、都度加入している旅行保険が
クレジットカード付帯保険によってどの程度代替可能かが
年会費を評価するうえで最も重要な検証対象となります。
一般的な海外旅行保険では、
1週間程度の渡航で1回あたり3,000〜6,000円前後が相場です。
仮に年2回の海外渡航がある場合、
年間の保険料はおおよそ6,000〜12,000円程度になります。
一方、高級クレジットカードに付帯する旅行保険が
これらの補償内容をカバーできる場合、
この支出は年会費の中に内包されていると考えることができます。
年間圧縮額の目安(海外旅行保険)
| 想定ケース | 年間保険料の目安 | 圧縮対象 |
|---|---|---|
| 年1回渡航(ケースA) | 0.3〜0.6万円 | 都度加入の旅行保険 |
| 年2回以上(ケースB) | 0.6〜1.2万円 | 年間/複数回加入保険 |
つまり、海外渡航の頻度によっては、
年会費の一部が「旅行保険コストの置き換え」として
数値的に評価できることになります。
検証② 個人賠償責任保険
想定ケース:ケースC
本検証は、
個人賠償責任保険を
- 単体で加入している
- もしくは内容を正確に把握していない
ケースCを前提としています。
クレジットカード付帯の個人賠償責任保険が、
既存保険の補完または代替として機能する場合、
この支出は「既存固定費」として整理することが可能です。
個人賠償責任保険は、
単体で加入した場合、年間2,000〜5,000円程度が一般的です。
既にクレジットカード付帯保険で
同等の補償が確保されている場合、
この支出も重複領域として整理することができます。
年間圧縮額の目安(個人賠償責任保険)
| 想定ケース | 年間保険料の目安 | 圧縮の性質 |
|---|---|---|
| ケースC | 0.2〜0.5万円 | 恒常的(固定費の整理) |
つまり、個人賠償責任保険については、
一度条件が合致すれば、
年会費の一部を「恒常的な固定費の置き換え」として
評価できる可能性があります。
検証③ 家電・ガジェット延長保証
想定ケース:ケースD
本検証は、
- 家電・ガジェットの購入頻度が高く
- 延長保証に追加コストを支払っている
ケースDを前提としています。
クレジットカードの購入保険・延長保証によって
これらの支出が代替可能な場合、
年会費の一部を「保証コストの置き換え」として評価できます。
家電やガジェットの延長保証は、
購入価格の5〜10%前後が目安とされることが多く、
購入頻度によっては年間でまとまった金額になります。
年間圧縮額の目安( 家電・ガジェット延長保証)
| 想定ケース | 年間圧縮額の目安 | 圧縮の性質 |
|---|---|---|
| ケースD | 0.5〜2.0万円以上 | スポット的 (年による変動大) |
この圧縮効果は毎年必ず発生するものではありませんが、
該当する年においては、
年会費の相当部分を一気に回収する力を持っています。
整理|どこまで“純投資元本”を圧縮できるのか
ここまでの検証を踏まえると、
年会費に含まれる保険価値の効き方は、
利用ケースによって大きく異なります。
全体像を先に整理すると、次のとおりです。
| ケース | 主に圧縮される支出 | 圧縮可能な金額レンジ | 投資的評価 |
|---|---|---|---|
| ケースA | 旅行保険 | 0.3〜0.6万円 | 防御的 |
| ケースB | 旅行保険 | 0.6〜1.2万円 | 投資成立の入口 |
| ケースC | 個人賠償 | 0.2〜0.5万円 | 補助的 |
| ケースD | 延長保証 | 0.5〜2.0万円以上 | スポット的 |
これらのケースは排他的なものではなく、
利用状況によっては複数が同時に当てはまる場合もあります。
ただし本記事では、
年会費を投資として評価する基準を明確にするため、
各圧縮効果を分解して整理しています。
上記の表は、年会費に含まれる保険価値が
「どの利用ケースで、どのように効きやすいか」を
俯瞰するための整理です。
以下では、この整理を前提として、
各ケースが年会費評価にどのような意味を持つのかを
順に確認していきます。
【定義|本シリーズにおける「純投資元本」】
純投資元本 = 年会費 − 圧縮可能な既存支出(保険など)
本記事で行っているのは、年会費から差し引き得る
「圧縮可能な既存支出」の範囲を整理することです。
ケースA|年1回以上の海外渡航(ライトトラベラー)
年に1回程度海外渡航を行う場合(ケースA)、
前節で整理した旅行保険の圧縮効果が評価対象となります。
ただし、その効果は年会費全体を回収するほどではなく、
年会費の下方リスクを抑える「防御的な役割」に留まります。
ケースB|年2回以上の海外渡航(ヘビートラベラー)
ケースBでは、前節で整理した旅行保険の圧縮効果を前提として、
その評価を年会費全体に適用します。
このケースは、年会費を投資対象として検討するための
実質的なスタートラインに位置づけられます。
ケースC|国内中心・日常リスク型
ケースCでは、個人賠償責任保険が圧縮対象となります。
金額的なインパクトは限定的ですが、
固定費整理によって年会費評価の安定性を高めます。
ケースD|家電・ガジェット購入頻度が高い場合
ケースDでは、家電・ガジェット延長保証が圧縮対象となります。
再現性は低いものの、
条件が揃った年には年会費評価に大きく寄与します。
以上のとおり、年会費の圧縮効果は一様ではなく、
利用ケースによって性質が大きく異なります。
重要なのは、
年会費を一律に評価するのではなく、
自分のケースにおいて、
どこまでが既存支出の置き換えで、
どこからが純投資元本として残るのかを見極めることです。
結論|これは「得」ではない。「整理」である
このように、保険料の二重払いを整理するだけでも、
年会費という投下資本は一定程度圧縮することができます。
ただし、これはあくまで
「支出削減による回収」の一部にすぎません。
次の記事では、
本記事で整理した「純投資元本」を入力値として、
決済によって得られるマイルが
どの程度のリターン(IRR)を生み出すのかを、
具体的な数値モデルで検証します。

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